「ドローンのレベル3.5飛行という言葉を聞いたけど、具体的に何がどう変わるの?」
「申請方法が複雑そうでよくわからない…」
そんな疑問をお持ちではありませんか? 国土交通省は、ドローンによる物資輸送やインフラ点検といった事業をより活発にするため、2023年12月に「レベル3.5飛行」という新しい制度を設けました。この記事では、国土交通省が公開した情報に基づき、ドローンのレベル3.5飛行とは何か、従来のレベル3飛行との違い、そして具体的な申請手続きについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。この記事を読めば、レベル3.5飛行の全体像を理解し、申請に向けた準備をスムーズに進められるようになるでしょう。
まず、レベル3.5飛行が従来のレベル3飛行(無人航空機目視外飛行)と何が違うのかを見ていきましょう。
右の図は、従来のレベル3飛行(左側、「事業者の要望」)と新しいレベル3.5飛行(右側、「改革案」)の大きな違いを示しています。従来のレベル3飛行では、補助者や看板の配置、道路横断前の一時停止といった「立入管理措置」が必要でした。
レベル3.5飛行の最大のポイントは、以下の条件を満たすことで、この立入管理措置を撤廃できる点です(右図右側の「改革案」参照)。
これらの条件を満たすことで、これまで必要だった補助者や看板の配置が不要になり(右図右側の「○補助者・看板等不要」)、特に道路や鉄道などの横断がよりスムーズに行えるようになります。
左の図は、従来のレベル3飛行を実施する際に満たす必要があった「全般的要件」と「個別要件」です。
レベル3.5飛行では、これらの要件のうち、「第三者の立入管理(補助者の配置、看板での周知等)」に関する要件のみが撤廃されます。具体的にどの部分が撤廃されるのかは、次の図でご確認ください。
右の図で黄色くハイライトされている「第三者の立入管理(補助者の配置、看板での周知等)」に関する要件のみが撤廃の対象となります。
しかし、その他の全般的要件(第三者が立ち入る可能性が低い場所の選定、十分な飛行実績を有する機体の使用、緊急時の対応手順策定など)や、撤廃対象外の個別要件(自機周辺の気象状況の監視、自機の監視、有人機等の監視、操縦者等の教育訓練)は引き続き満たす必要があるので注意が必要です。
つまり、レベル3.5飛行は、これまで立入管理措置で対応していた「無人地帯の確保」を機上カメラで代替するものであり、立入管理措置そのものが完全に不要になるわけではない、という点を理解しておくことが重要です。
左の図が示すように、レベル3.5飛行では、従来の補助者や看板の配置による立入管理措置を、ドローンに搭載したカメラ(機上カメラ)と地上のモニター等による確認で代替します。
これにより、飛行経路下、つまり事前に設定した立入管理区画が無人地帯であることを確認し、レベル3飛行の要件と同様に無人地帯を確保できると考えられています。
レベル3.5飛行で道路や鉄道の上空を一時的に横断する場合、前述の機上カメラの活用に加えて、右の図で示されているように以下の2つの条件が必須となります。
一等/二等の種別は問いませんが、レベル3.5飛行が目視外飛行を前提としているため、飛行させるドローンの種類・重量に対応し、目視内飛行の限定解除を受けたものである必要があります。
万が一の事故で第三者の負傷や交通障害等が発生した場合に、十分な補償ができる保険への加入が必要です。具体的な補償金額は飛行内容によって異なるため、事業者が適切に検討・設定します。
注意点: あくまで機上カメラによって飛行経路下の歩行者等の確認が可能であることが前提です。操縦ライセンス保有や保険加入だけで、これらの確認なしに道路等を横断できるわけではありません。
では、このレベル3.5飛行は、ドローンの飛行カテゴリーの中でどこに位置付けられるのでしょうか?
左の図は、カテゴリーII飛行における従来のレベル3(左側イメージ)と新しいレベル3.5(右側イメージ)の飛行イメージを比較したものです。
結論から言うと、レベル3.5飛行は「カテゴリーⅡ飛行(レベル3飛行)」に該当します。従来のレベル3飛行では補助者や看板が必要でしたが、レベル3.5飛行では機上カメラ等で代替し、同様に無人地帯であることを確認して飛行します。
よく誤解されがちですが、レベル3.5飛行は「カテゴリーⅢ飛行(レベル4飛行)」ではありません。右の図の左側がカテゴリーⅢ飛行(レベル4飛行)のイメージで、立入管理措置を講じずに有人地帯を飛行します。一方、右側のレベル3.5飛行は、機体に搭載したカメラによって無人地帯であることを確認して飛行し、一時的な横断などが対象です。
左の図は、カテゴリーII(レベル3)、カテゴリーII(レベル3.5)、カテゴリーIII(レベル4)の飛行について、それぞれの概要をテキストで比較したものです。レベル3.5飛行は、機体に搭載したカメラによって、飛行経路下に歩行者等がいない無人地帯であることを確認して飛行する点が特徴です。
レベル3.5飛行は、あくまで無人地帯上空での飛行であり、その確認方法としてデジタル技術を活用する点がポイントです。
右の表は、無人航空機のレベル3飛行とレベル4飛行の主な違いを「飛行の形態」「飛行の要件」「安全管理の考え方」の観点から詳細にまとめたものです。レベル3.5飛行は、この表における「レベル3飛行」の一部として整理され、「飛行経路下に歩行者等がいない無人地帯であることを確認して飛行する」という点が重要です(表下部の※注釈参照)。また、レベル3飛行における立入管理措置の具体例も示されています。
レベル3.5飛行の申請手続きは、ドローンの事業化を加速する観点から、手続きの簡素化と短期間での許可・承認を目指しています。
そのために、以下の2つの条件が設けられています。
このマニュアルは、「無人航空機飛行マニュアル(夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行 -『レベル3.5飛行』等-」を指します。
これにより、通常のレベル3飛行で必要だった提出資料の一部が不要または簡素化されます。具体的には、「運航概要宣言書」を提出することで、一部の資料の提出が不要・簡素化されます。
Step.1: 航空局と「運航概要宣言書」の調整を実施 (前のセクションの図参照)
Step.2: 地方航空局へ飛行許可・承認申請書を提出 (右の図の⑤)
Step.1で調整が完了し、航空局から送付された「レベル3.5飛行用申請様式」と「レベル3.5飛行マニュアル」を用いて、東京航空局または大阪航空局へ申請書を提出します(右の図のStep.2)。航空局と地方航空局は適宜情報連携を行います。
※「運航概要宣言書」の内容に変更がない限り、2回目以降の申請ではStep.1の対応は省略可能です。
※DIPS2.0での電子申請に対応しています(右の図のStep.2下部の黄色い注釈参照)。
申請時に提出が不要となる資料でも、事業者自身で作成し、常に備えておく必要があるので注意してください(左図は作成書類のイメージです)。これらは、レベル3飛行に必要な要件への適合を示す資料や、飛行の安全を確保するための運航条件等を定めた資料です。
具体的には、以下のような資料が該当します。
これらの資料は、基本的に申請時の提出は不要ですが、国土交通省航空局から別途提出を求められた場合には、速やかに提出する必要があります。
最後に、レベル3.5飛行の重要なポイントを再度確認しましょう。
<前提となる特に重要な3つの要件>
<実施に際し、作成が必要となる資料>
※これらの資料は基本的に申請時の提出は不要ですが、国土交通省航空局から求められた場合は提出が必要です。
レベル3.5飛行制度は、ドローンの活用の幅を大きく広げる可能性を秘めています。手続きの簡素化により、これまで以上に多くの事業者がドローンビジネスに参入しやすくなることが期待されます。この記事が、レベル3.5飛行の理解と申請準備の一助となれば幸いです。より詳細な情報や不明な点については、必ず国土交通省の公式サイトで最新情報を確認するか、直接お問い合わせください。
情報元: 国土交通省「カテゴリーⅡ飛行(レベル3.5飛行)の許可・承認申請について(令和6年2月)」
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001725836.pdf
免責事項: 本記事は、公開されている情報に基づき、情報提供を目的として作成されたものです。制度や申請手続きに関する最新かつ正確な情報は、必ず国土交通省の公式発表をご確認ください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねます。